最近、駅で駅員さんや役所の窓口、コンビニエンスストアのレジなどで、ちょっとした理由で怒りを爆発させている老人を目にすることが増えています。
もしかするとあなたの親や夫が最近やけに怒りっぽくなっていることはありませんか。
人間は年を重ねると丸くなると思いきや、正反対の行動に出る人が多いのはなぜなのでしょう。
明日はわが身とならないためにも、怒りに任せて大声で暴言を吐く老人は、どうしてそうなるのか、予防策はあるのか、また出会ってしまった時の接し方について考えてみたいと思います。





キレやすくなるのは前頭葉の衰えから?


◇ ◇ ◇

街中で、キレる高齢者や暴言を吐く老人など、シニアの問題行動が後を絶ちません。

このような背景には、かつてのように年長者への敬意が失われつつあるとともに、定年退職後にプライドや存在感を保てず、イライラを募らせる高齢者が多いからだと考えられます。

しかし感情的な部分ばかりでなく、寿命が延びて脳の前頭葉が萎縮している人の数が増えたことも問題行動の要因の1つだと言われています。


加齢による脳の老化には順番があり、最初に老化が表れるのが前頭葉です。


前頭葉は意欲の高さを左右し、感情をコントロールをしている場所ですが、刺激のないマンネリ化した生活をしていると、真っ先に萎縮してしまうのです。


そもそも前頭葉が人間にどのような働きをするのかが解明されたのは、前頭葉の一部を切除するロボトミー手術を受けた患者が怒りの感情をコントロールできなくなったことに由来します。

その後の研究で、同じような前頭葉の変化が、老化による機能低下でも表れることが解明されたのです。


同じ脳の変化により起こる認知症の発症確率が70代までは低いのに対して、前頭葉の老化はすでに40代で、始まるというのが一般的な見地のようです。


前頭葉が萎縮すると、1.意欲の低下、2.感情抑制の低下、3.判断力の低下、4.性格の先鋭化という4つの老化現象が表れます。

なかでも「4.性格の先鋭化」は、頑固者はより強情に、疑り深い人はより警戒心の塊に、怒りっぽい人はよりキレやすくなるなど、生来の性格に拍車がかかるようになり、若いころから短気な人は、キレる老人になりやすいのです。


つまり、前頭葉の機能低下は「キレる高齢者」と密接に関係しており、前頭葉の老化をいかに防ぐかがその解決策となるのです。


自分の前頭葉機能はどれほど低下しているのかは、感情老化度をチェックすることでを知ることができます。 脳は使わないと衰えて萎縮もしますが、鍛え直すことはいくつからでも可能です。

「感情の老化度」チェックリスト 自分の感情年齢チェックをしてみましょう。 ※以下の表と同じ内容を表の下に文字でも記載。見やすい方でチェックしてください。
 下の30項目を読み、該当する場合は「YES」、しない場合は「NO」、迷う場合は「どちらともいえない」に○をつけ、各々○の数に所定の数字を掛け算。(1)~(5)の数字を足した合計が実年齢をオーバーしたら注意です!


【チェックリスト】

・最近自分から友達を誘ったことがない  はい微妙いいえ
・性欲、好奇心がかなり減退している  はい微妙いいえ
・失敗を昔よりもうじうじと引きずる  はい微妙いいえ
・年下にタメ口を聞かれるとムッとする  はい微妙いいえ
・この年で始めても遅いとよく思う  はい微妙いいえ
・お金を使うより、老後の為にお金を貯めたい  はい微妙いいえ
・気になったことは、しばらく気にし続ける  はい微妙いいえ
・最近、感動して涙を流した記憶がない  はい微妙いいえ
・かっとなって怒鳴ることが多い  はい微妙いいえ
・起業など、若い人の話だ  はい微妙いいえ
・この半年、1本も映画を見てない  はい微妙いいえ
・夫婦げんかで、怒りがなかなか収まらない  はい微妙いいえ
・新刊本、習い事、資格、旅行等の広告に興味がわかない  はい微妙いいえ
・友達の自慢話は、昔よりじっと聞いていられない  はい微妙いいえ
・この1か月、1冊も本を読んでいない  はい微妙いいえ
・最近の若者のことはわからないと、よく思う  はい微妙いいえ
・今日の出来事が気になり、眠れない時がある  はい微妙いいえ
・最近、涙もろくなった  はい微妙いいえ
・昔と比べて、斬新なアイデアが浮かばなくなった  はい微妙いいえ
・グルメ雑誌、ファッション誌は自分とは別世界のことだと思う  はい微妙いいえ
・気に入った案を1つ思いつくと、別の考えが浮かばない  はい微妙いいえ
・昔よりイラッとすることが多くなった  はい微妙いいえ
・ここ数年、旅行は自分で計画せず、丸乗りする  はい微妙いいえ
・昔と比べて、何事にも腰が重くなった  はい微妙いいえ

チェックの数にそれぞれ「3」、「2」、「1」をかける。 はい×3=(1)微妙×2=(2)いいえ×1=(3)

・「ごますり」とわかっていても気持ちがいい  はい微妙いいえ
・「あいつは〇〇だから」と決めつけた発言をよくする  はい微妙いいえ
・人にものを尋ねるのがおっくうだ  はい微妙いいえ
・仕事で、こちらの方がよいと思っても、面倒で提案しない  はい微妙いいえ
・人を一度嫌い(好き)になると、なかなかいい点(悪い点)を認められない  はい微妙いいえ

チェックの数にそれぞれ「2」、「1」、「0」をかける。 はい×2=(4)微妙×1=(5)いいえ×0=0
【あなたの感情年齢】 (1)(  )+(2)(  )+(3)(  )+(4)(  )+(5)(  )=( )才
 実際の年齢よりも感情年齢が上の人は要注意。






感情の若さを保つ「脳」の鍛え方

脳には下図のように大きく4つの領域があり、それぞれ異なる機能を持っているといます。


【前頭葉】

思考、人格、理性、創造力、意欲、感情などを司る場所です。
脳の大部分を占めており、ここが損傷・退化すると感情のコントロールができなくなっ たり、集中力が低下します。


【頭頂葉】

空間、触覚、視覚、感覚、色彩などを認識する部位です。
場所によって異なりますが、中央部を損傷すると計算ができなくなることもあります。


【後頭葉】

視覚情報を処理する部分です。
ここが傷つくと、目は正常に機能していても、いつも見ている人の顔や物を認識することができなくなります。


【側頭葉】

言語の理解、記憶、聴覚、嗅覚、感情の制御にかかわる部分です。
損傷を受ける場所によって失語症や記憶障害などの障害が起こります。


仮に前述の『感情の老化度』テストの点数が良くなかったとしても、今から前頭葉を鍛えれば感情の老化は予防することができます。


脳は使わなければ衰えていきますが、鍛えれば活性化し、緊急事態や新しいことへの対応も柔軟にできるようになります。


例えば、読書は側頭葉が、数字パズルは頭頂葉がそれぞれ鍛えられますが、前頭葉は鍛えられません。

脳の部位別に鍛え方があるので、それを意識して行うことが大切です。


前頭葉の衰えが始まると、同じ料理ばかり作ったり、いつも食べに行く店が決まってきたり、同じ作家の本しか読まないなど、マンネリ傾向が進みます。

思い当たる人はすぐにでお前頭葉を鍛え直すようにしましょう。


前頭葉を活用するには、マンネリな生活から脱却して、普段と違うことをするのがいちばんの刺激になり、鍛えることにもつながります。


初めての料理にチャレンジしたり、知らない土地を旅したりするのもおすすめです。



前頭葉を鍛える主な5つのポイントをご紹介します。
ぜひ生活のなかにに取り入れてみてください。


1.新しいことにチャレンジする

前頭葉を刺激するなら、普段と違うことにチャレンジしみてください。
たとえば、行ったことのない店で食事をしてみる、作ったことのない料理にトライする、行きたいと思っていた場所を旅行するなど、新しいことに挑戦しましょう。


2.人とコミュニケーションを取る

前頭葉が衰えると意欲がなくなり、引きこもりがちになります。
友達同士の集まりや地元のイベント、ご近所の井戸端会議などにも積極的に参加する姿勢は、コミュニケーションを取ることが前頭葉の活性化につながります。


3.答えを求める前にまずは行動

何か行動を起こす前から、結果や答えを決めつけるのはやめましょう。
無鉄砲なくらい答えを求めず、まずは行動してみることです。
すると結果としてはたとえ失敗しても、その想定外の出来事が前頭葉を刺激し、感情の老化を防いでくれるのです。


4.投資などで一喜一憂してみる

たまには、ワクワク、ドキドキできることに挑戦するのも大切です。
たとえば株式投資など、何が起こるかわからないリスキーな要素のあることに挑戦してみるのもいいでしょう。
もちろん節度を持ってやることが何よりですが、予測のつかない展開は老化防止にも一役買ってくれるのです。


5.恋愛のトキメキが若さの秘訣

人間はいくつになっても「トキメキ」が必要です。
たとえ配偶者がいても、魅力的な異性にドキドキすることで脳も心も若返るのです。
リアルな恋愛だけでなく、好きなアイドルや韓流スターの追っかけなど疑似恋愛でも同じ効果があります。


女性は、閉経すると男性ホルモンの分泌量が増えて、外交的で活動的になります。

前頭葉の衰えが進行すると、意欲が低下しがちですが、男性ホルモンは性欲のホルモンであるとともに意欲のホルモンでもあるので、意欲面の衰えをカバーしてくれるのです。

ある程度の年齢を重ねた熟女が元気なのは、男性ホルモンの増加による影響が少なからずあるということです。


こうして前頭葉の若さが保たれれば、キレまくる老人などにならずにすむ可能性があります。

逆に、ある日を境に急に意欲をなくした場合は、うつ病の可能性があるので、早めに受診して確実に治療することが大切です。

長い期間をかけて徐々に悪化する認知症と混同せぬよう、早めにしっかりとケアしてください。





怒れるシニアの気持ちを軽くする接し方

介護施設や自宅介護の現場でも、男女ともに若い頃には理性で抑えがきいていた感情が、脳の衰えで性格の先鋭化が進み、いったん火がつくと手がつけられなくなる老人はたくさんいます。


普段はおとなしくても、気に障ることがあると大声で怒鳴り散らしたり、机や壁を叩いて恫喝する、詰め寄るなど、感情をコントロールできない高齢者がいるのは事実です。

なかには、一般社会なら当然セクハラと思われる下ネタや性的な言動をとる男性の高齢者もいます。



女性も恋多き乙女に戻って、デイサービスなどで目に余るような嫉妬や恋愛関係が渦巻き、恋話やガールズトークで盛り上がるケースもあるようです。



では、そういう怒りっぽくなった高齢者と接する際に、私たちはどう対処したらいいのでしょうか。


介護を行う側が怒りの感情をうまく処理できないと、きちんと介護ができなくなってくることがあります。
そこで役立つのがアンガーマネジメントです。


大切なのは、相手を変えようとしたり、怒る状況を解決しようとするのではなく、日々変わりゆく高齢者の状況に自分を合わせること。つまり、自分が変わることがポイントです。



以下に、3つのケーススタディーをご紹介します。
ケース1.「定年退職して家にいる父が、何かにつけて家族を怒鳴り散らして困る」

定年退職などで仕事から完全にリタイアすると、肩書も人間関係もなくなり、プライドが揺らぎ始めます。

しかも自宅で何もしないと存在感がなくなり、自尊心が脅かされることから、脅えが怒りとなって家族に向けられ、粗暴な言動に出てくる人もいます。

日頃から頼りになる尊敬の言葉を口にして、立てることも大切です。

また、機嫌のよい時は用事などを頼み、「さすがお父さん!」などと感謝を伝えるのも一案です。


ケース2.「父が介護施設の他の入居者の面会家族がうるさいと怒るクレーマーに!」

面会家族への苦情は、「うるさいなら自分の部屋に戻ればいいのに」と、ほかの入居者や職員から疎ましく思われて、ますます孤立を深めることになりかねません。

怒ってクレームをつける行動の陰には、自分には面会者がいない寂しさが潜んでいる可能性があります。

その感情を見極めて、寂しさをフォローすることが先決です。


ケース3.「認知症が進んできた母が財布を盗んだ!と娘を疑う」

認知症の進行によっては「財布を盗られた」などの被害妄想があらわれ、身近な人に敵意が向けらます。

説得しようとして応戦すると、言い争いになりかえって疲弊してしまうので、まずは「相手が事実だと思っていること」に合わせます。


あるはずの財布が見当たらず、なくしたかもしれないと不安に思っている、第1次感情に寄り添い、母親が置き忘れそうな場所を一緒に探すなど、不安を除く作業に協力する姿勢を示してください。


ケーススタディーの1.は自尊心、2.は寂しさ、3.は不安といった怒りの原因となるそれぞれ異なった感情が隠れています。


特に高齢者は家族や慣れ親しんだヘルパーさんなど、身近な人に感情をぶつけやすく、家族も感情のままに対抗して応戦するパターンに陥りがちです。


事実や正論を振りかざしてもかえって相手の怒りを増幅させ、お互いに疲弊するだけです。

説得よりも納得してもらうことが大切なのです。


ある程度の年齢になると親子の立場が逆転し、子が親に指図すことが多くなりますが、そこで親の気持ちに寄り添うことで、怒りの感情を和らげられることもあります。


高齢者に敬意を払い、ぶつかり合うのではなくユーモアのある切り返しで和やかな雰囲気を作り出すのも効果的です。



【アンガーマネジメントでの対処ポイント】

1.すぐ応戦しない

家族だと「だから違うでしょ!」と正論や事実で応戦しがちなのですが、怒りを感じた瞬間、意識的に「一呼吸おく」ことです。
一呼吸置くことで「売り言葉に買い言葉」を避けるのに有効になります。


2.ペースや場所を変える

怒りを抑えきれない高齢者に対して、口調や話す速度・トーンを変えたり、部屋を変えたり、「お茶の時間にしましょうか」「まずは座りましょうか」などと状況を変え、落ち着かせるのも重要です。


3.第1次感情に寄り添う

怒りは第2次感情で、その下には心配、寂しさ、不甲斐なさ、恥ずかしさ、残念、不安、悲しみなどの第1次感情があります。
そこに注目した言葉かけをすると受け入れてもらいやすいかもしれません。




まとめ

感情の老化を防ぐには、前頭葉を刺激して鍛えることが大切なようですね。
今回ご紹介した、日常的に取り入れやすい次の5ポイントを実践して、私も前頭葉の機能低下の予防に努めるようにたいと思います。
穏やかで変化のない生活よりも、前頭葉のためには刺激のある人との交流や新しいことに挑戦する柔軟さも大切にしていきたいものです。
アンガーマネジメントは、人に対してだけでなく、自分の怒りにも対処することができる方法なので、怒りが湧いたときに、感情に任せて言葉をぶつけるのではなく、まずは息を止めて6秒ゆっくりと数えてみると良いようです。
すると怒りは消えていなくても、怒りの内容をちょっとだけ冷静に伝えることができるかもしれません。

『[図解]アンガーマネジメント超入門 「怒り」が消える心のトレーニング』

筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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