脳の老化を意識して気づくのはなかなか難しいけれど、老化のサインは生活の中で見つけられるものです。
アルツハイマー型認知症は、実は発症する20年くらい前から少しずつ進行していると言われています。 まだ若いからと安心せずに、早めに対処していきましょう。
今回は、認知症を予防の観点から見ていきたいと思います。
実は、若い頃からの認知症治療や研究に取り組み、認知症予防や早期発見の啓発のために講演やセミナーを開催している「40代からの認知症リスク低減機構」という医師らの啓発団体があります。
40代の働き盛りだと、認知症になる自分の姿などは想像することもできず、日々の忙しさに追われて脳や身体のことなどは二の次さんの次になっている方も多いのではないかと思われますが、実はこの年代からこそ取り組み始めていただきたいのです。
しかし、健康な人がいきなりアルツハイマーになるわけではありません。
最近では、認知機能が落ちてきた「軽度認知障害(MCI)※注1と、さらにその前段階の「主観的認知機能低下(SCD)※注1があり、4つの段階に分けて考えられているといいます。
つまり「未病」にも3つの段階があるというわけです。
認知症は、ある日突然発症するわけではなく、徐々に進行していきます。
中でも、アルツハイマー型認知症で原因としては、アミロイドβタンパクが脳に蓄積し、脳神経に障害を起こして発症すると考えられています。
アルツハイマー型認知症は、発症の20年くらい前からアミロイドβは脳の中にたまりはじめるため、MCIやSCDの段階で気づいて予防することが大切になってくるのです。
※注1 MCIは「Mild Cognitive Impairment」の略、SCDは「Subjective Cognitive Decline」の略。
次のような症状がみられたら脳の老化のサインかもしれません。
早めに気づいて対処することが大切だということです。
【脳の老化サイン】
・なぜかイライラする
・眠れなくなる
・外出がおっくうになる
・趣味に楽しみを感じなくなる
・ど忘れが増える
・同じことを何度も聞くようになる
・頭痛や胃痛がある
自分の脳の老化に気づくためには、定期的に認知機能をチェックすることをお勧めします。
「認知症ねっと」では、ウェブ上で無料で認知機能をチェックできますので、気になる方は試してみてはいかがでしょうか。
認知症ねっと無料認知機能チェック
世界保健機関(WHO)は、「認知機能低下および認知症のリスク低減 WHOガイドライン」で、生活習慣病が認知症に与える影響を発表しています。
こういった情報も含めて、脳の老化を予防するポイントとしては、主に次の5つを挙げることができるようです。
【脳の老化を予防するポイント】
・生活習慣病の改善
糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満、歯周病などの生活習慣病をきちんと治療すること。
・対人ゲーム
麻雀、トランプ、オセロ、チェス、将棋、囲碁のような対人ゲームをすること。
・運動をしながら頭を使う
体操しながら歌う、散歩しながら計算するなど、体と同時に脳を使うこと。
・質のよい睡眠をとる
リズムを整え、質のよい睡眠を十分な時間取ること。
・バランスのよい食事
過度の飲酒、間食・夜食を避け、WHO推奨の地中海食※注3、やバランスのよい日本食を摂ること。
※注3 イタリアやスペインなど地中海沿岸諸国の伝統料理「地中海食」は、オリーブオイルと魚介類の摂取が多いのが特徴です。心臓病の予防効果やダイエット効果が確認されており、ニューヨーク在住の2258人を対象にした調査からも、アルツハイマーのリスクが低いことが分かっています。
また、トランプや麻雀など、人とコミュニケーションをとりながら楽しめるゲームは、人間を相手にすることでコミュニケーションを楽しめますし、相手からの予期せぬ反応が返ってくることもあり変化に富んでいます。 勝ち負けに一喜一憂して感情を揺さぶられることも多く、ひとりでできる計算ドリルや漢字の書き取りなどを繰り返すよりも、脳の活性化にはよいのではないでしょうか。
質の良い睡眠についてですが、睡眠中にアミロイドβタンパクが代謝されて排出されるので、睡眠不足になると代謝されずに蓄積しやすくなります。
現代は副作用の少ない優れた睡眠薬もあるので、どうしても眠れないときは活用するのもよいと思われます。
寝酒は眠りが浅くなるのであまり身体には良くありません。
まとめ
アルツハイマーは、実は発症する20年くらい前から少しずつ進行していると言われています。
だからこそ若い頃からの予防が大切なのです。
薬やサプリメントに頼ろうとせずに、普段の生活にこそ気を配りましょう。
特に食事は1日のうちにしっかりととらなければならないものですから、内容や栄養バランスに重きを置いて、認知症予防の要だととらえることが大切です。
まだ40代、50代だからと油断せずに、見直すべきところは早めに見直していきましょう。
本人・家族のための若年性認知症サポートブック