日本語でコミュニケーションは「伝達」、コミュニケーションスキルは「伝達技術」と訳されます。
話を「聞く」ことは、自分を軸にした行動です。
ただ一方的に聞いているだけでは、あなたがどれほど聞いたと満足しても、相手はそれほど話を聞いてもらえていないと感じているかもしれません。
コミュニケーションで一番重要なスキルは、「聞く力」ではなく、「伝える力」だと思うのです。
相手の話を自分が聞いているという自己満足ではなく、相手が話を聞いてもらえたと伝わることこそ、本当の聞き上手ではないでしょうか。
今回は、この人と話をしたい!と思われるような、聞き上手になるためのヒントをお話ししたいと思います。
ひとつ目は「聞いているつもり」タイプ、ふたつ目は「相手の話が全く聞けていない」タイプです。
聞いているつもりケースとは、自分では相手の話を最後まで真剣に聞いていても、「話を聞いていない」と言われてしまう場合です。
自分では、本当に聞いていると思っているので「聞いているつもりです…」と言っても、相手は「いや、ちゃんと聞いてよ」と突っ込まれてしまいます。
自信を持って「聞いています」言いきれないのは、あくまで“つもり”であって確実に聞けているという自信がないということです。
コミュニケーションは、すべて相手の解釈次第なので、どれほどあなたが聞いているつもりでも、相手が話を聞いてくれたと解釈されなければ、聞いているとは言えないのです。
もしかするとそれはあなたの聞く態度に原因があるのかもしれません。
それを振り返るためには、相手の立場で考えてみるとよくわかります。
あなたがどういうときに相手が自分の話をちゃんと聞いていると感じるかを考えてみましょう。
たとえば、スマホをみながら、あるいはパソコンをみながら聞いているのと向かい合って時には目を見てうなずきながら聞いているのとでは、どちらが聞いてくれていると感じるでしょうか?
ふたつ目の相手の話が全く聞けていない人というのは、常に自分の世界で頭がいっぱいな人です。
なので話を聞いていると、最後まで聞かなくてもわかる! と自分で筋書きを先読みして、最後まで相手に話をさせることなく、いつも途中で話に割って入り込み話し始めてしまうのです。
こういうタイプの場合、話し手の解釈と全く違う解釈をしやすく思い込みが激しいので、自分のミスになかなか気づかないというのも厄介なところです。
話を聞いていないと言われる原因は、相手にあなたが聞いていることが伝わっていないからです。
まずは、話を聞いていると相手に伝わる聞き方は何かを考えてみましょう。
相手が話していることを表面的に聞くだけでなく、「人の話を本当の意味で聞く力」をアップさせる方法を探っていくと、提案したいのは3つの「きく」をマスターすることです。
「きく」という言葉には、3つの意味が含まれています。
1.『聞く』。
一般的によく使うのが「聞く」ですが、これは音楽や相手の声などが音声として自然に耳に入ってくるといった意味で使われます。
どちらかと言うと受身的で、聞き流しているといったニュアンスです。
2.『聴く』。
話し手の気持ちや考え方などを理解するために、能動的に聞き手が心や身体の感覚を集中させて耳を傾けるといった意味です。
例えば、耳だけでなく、目で相手の表情や仕草を観察し、時には相手の視線に合わせて、相手がその時に抱いている感情(怒り、悲しみ、喜びなど)を汲み取りながら声のトーンを変えて応対します。
これらによって、ちゃんと私の話を聞いてくれているという安心感を抱かせることができます。
3.『訊く』。
3つめは、質問する、たずねる、知ろうとする態度という意味があります。
例えば、相手の話に違和感や疑問を感じた時に「それはこういうことですか?」と質問すると、相手との話が深まって効果的になる時もあります。
ただしやりすぎると「尋問されている」「責められている」といった悪い印象を与える可能性もあるので、やり方には注意が必要です。
3つの「きく」を押さえたところで、具体的に相手の話をしっかり聞くスキルを身につけましょう。
1. 相手に向き合うこと
聴くという文字は、「耳」「+」「目」「心」という文字で、できています。
目だけを相手に向けるのではなく、体ごと全部相手に向けて相手の目を見て心から聞きます。
コミュニケーションの多くは言葉以外のことでわかることが多いので、話しかけられたときにスマホをスクロールしながら聞いても、相手には態度やしぐさで十分に注意を払っていないというメッセージとして受け取られてしまいます。
相手もスマホをいじっている場合なら話は別ですが、そもそもそんなときは、相手もまじめに会話をしたいとは思っていないと思われます。
2. うなずき・あいづちを打つこと
相手の話を肯定する意味でうなずくという動作は大切です。
あいづちも1種類でなく、相手の話の内容に応じて、「ふうん」「へぇ」「ほぉ〜」など時々、話の邪魔にならないように使い分けて対応します。
相手の話が一段落するまでは、自分の意見は控えてあいづちを打ちながら内容を整理しましょう。
もちろん、ずっと自分の意見を言ってはいけないというわけではありませんが、何かを話し合っているときに、自分の意見に固執すると、相手の言っている内容がが受け止められなくなります。
3. 認める・共感すること
相手の話の内容を受け止め、一旦認めて、さらに共感します。
自分の意見と違う場合でも、単なるオウム返しの返事はNGです。
オウムのオウム返しは音として捉えて音を繰り返しているだけなので、そんな聞き方では相手に失礼になります。
相手の気持ちのこもった言葉を認めて、共感しましょう。
そのうえで、相手の意見との違いや共感しにくいところなどを今度は相手に聞いてもらうのです。
聞き上手になると、相手に敬意を示せるようになります。
4. 途中で遮らないこと
相手の話がひと段落するまで、遮らず話を聞きます。
人の話を聞くことは、自分の中に情報をインプットすると意識的に決めることなので、実は相手をリードしていることになるのです。
相手を黙らせてしまうよりも多くの情報を得ることができるため、仮に話の途中で譲りがたい意見が出てきたとしても、途中で遮って相手の話を中断しないことです。
本当に聞き上手な人は、自分の欲望を優先して、人とのやり取りがうまくできなくなったり、望ましい結果を得られなくなったりすることはなく、どのような状況においても情報のインプットに徹するか、単に相手の話を聞くにとどめるか、フォローアップの質問をするかを合理的に決めることができます。
5. 要約確認と質問をすること
相手の話が一段落したら、別の言葉で言い換えて確認をします。
相手の言うことを100%理解できているという自信が無いときは、「それはこういうことですか」と簡潔に要約して何をきいてほしかったのかを確認します。
疑問に思うこと、わからないこと、気になることは、いくつかシンプルな質問をするだけで修正することができ、誤解が避けられます。
話の内容が把握できたら、相手がなぜそれを話そうと思ったかを理解する必要があります。
人が話をするときは必ず何らかの理由があるものなので、その理由を見極めましょう。
きくことは、実は大変そうだと思うかもしれませんが、まさにその通りなのです。
積極的に人の話を聞くことができる力とは、鍛錬したスキルであり、そのスキルを使える人とそうでない人がいることは事実です。
ビジネスにおいては必ずしもうまく話せる人の話を聞くことばかりではありません。
退屈な話やとりとめのない話をされることもあれば、気が散る状況の中で話をされることもあります。
それでも、いつ、どこで、有益な情報を持っている人と出くわすかもしれないので、それを引き出す方法を知っているに越したことはないでしょう。
空腹だったり、疲れていたり、ストレスを感じているときなど、その人によって注意を払うことや人の話を聞けなくなる状態になることだってあります。
私の場合は、同じ人に長話をされると、途中でそういう状態になることがあります。
どういう状態の時に自分がこれ以上注意を払い続けられなくなる限界点に気づくのかを知ることが大切だと思います。
聞き上手に対応していると、話の長い相手には話をさらに長くさせてしまう恐れがあるので対策が必要です。
同じタイプの方はご参考にされてください。
1. 制限時間を伝える
長話になりがちな相手が話しかけてきたら、制限時間を伝えます。
「資料を夕方までに提出しなくてはならないので、あまり時間が取れません。10分でよろしいですか」と最初に伝えておけば、話の途中でも「あ、ごめんなさい。ちょっと資料作り戻ります、またね」と言えます。
上司の場合なら、 「申し訳ありません。夕方までに提出する資料を作る時間ですので失礼します」と話を打ち切りやすくなります。
2. 質問で話を収束させる
制限時間を伝えられなかった場合、相手に「そろそろ話をやめるかな」と思わせるのは、人の話を聞くスキルとはまた別のスキルですが、こんなふうに言ってみてはどうでしょう。
相手の話の切れ目で、それまでの内容を要約確認をしてから、答えが、「はい、いいえ」で終わる質問をします。
その答えをもらったあと、「私が集中してあなたの話を聞くためには申し訳ありませんが少し時間必要です。この話は重要だと思いますが、頭のなかで整理できていないので少し時間をください。」と述べて、その場を立ち去ります。
まとめ
気分が良くないときや急いでいるとき、ストレスが溜まっているときは、会話していても気が散りやすくなり、興味も持てなくなります。
特に仕事上の難しい会話をしているときはそうなります。
時には”聞き”つつ、あいづちや表情、声のトーンを変化させて”聴き”、相手の話に興味を持って話題を深めるために”訊く”というように、相手の話や態度によっていろいろと使い分け、ぜひ本物のきき上手を目指しましょう!
プロカウンセラーの聞く技術