介護問題はある日突然やってきます。
しかしすべての人が、被介護者のそばにいて介護のできる環境にはありません。
昨今では航空券に介護割引料金が設定されるほど遠距離介護が増え、身近な存在となっています。
2000年の介護保険の施行から20年以上が経過し、全国各地のどこででも同様の介護サービスを受けることができるようになりましたが、介護者にとっての物理的な距離の問題は想像以上に大変であると言えるでしょう。
今回は遠距離介護について、考えていこうと思います。





呼び寄せることを考える


2000年に介護保険が導入され、介護費用の自己負担は1割になり、介護者にとって財政的には随分助かっていると思われます。
身内の介護問題が起こった場合、はじめはどうしてよいのかわからず途方に暮れる方も多いと思います。
しかし、時間は待ってくれません。

とにかく最初は、全国どこの自治体にもある介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者を支える、お近くの地域包括支援センターに相談されることをお勧めします。
そこでアドバイスを受けて、病院で病状を精査したり、介護保険を利用するために要介護認定を申請したり、介護施設への入所手続きなどを行っていきます。

介護認定が下りれば、ケアマネジャーなどと相談しながら個々の家庭事情に合わせた介護メニューを決めていきます。

同居であったり、近くに住んでいても、ほとんどの家庭は何らかの形で施設を利用せざるをえないと思います。
その場合、金銭に余裕があれば有料老人ホームへの入所なども考えられますが、まずは公的な施設である特別養護老人ホームや老人保健施設への入所を考えるでしょう。
私の母の介護の場合は同居していましたので、平日はデイサービスに預け、週末の土日にショートステイとういうパターンで介護をしていました。

完全に入所することを考える場合は、特養も老健も待機人数が多く、なかなか入れないことが問題になってきます。
私も完全入所を考えて、特養に連絡を入れましたが2年くらい待たされると言われました。
申込みをするのであれば、半年、1年と待たされることを覚悟して、1日でも早く申し込みをしておくべきでしょう。

近くにいる場合はまだよいのですが、遠方に住む親に介護の必要が生じたり、寝たきりになった場合に、呼び寄せて面倒を見るのか、遠距離のまま介護をするかが大きな決断になってきます。
それぞれの家族の状況次第ですが、概ね子どもが地方に住む親を呼び寄せようとした場合に、親側の気持ちとしては、「この年になって見知らぬ土地には行きたくない」という感情が働きます。
さらに認知症の場合には、急激な環境の変化によって進行に災いすることもあります。






いかに生活を合理化させるか

遠距離介護を選んだ場合、週末の2日を介護に通う時間として確保するためには、平日の生活を凝縮して合理化させることが必要になってきます。
そうしなければ週末に介護に行く時間はつくれません。
いかに生活を合理化させて時間をつくるかが勝負だとも言えます。

またきょうだいや親族がいる場合は、それらとの関係も精神的な負担になる可能性があります。
誰が面倒を見るのか、と言うことをめぐって争いになることも少なくないからです。
特に金銭が絡むと話がややこしくなるので、介護に関して発生するお金は、すべて親のお金から支払うことをおすすめします。
この前提があれば、介護中に兄弟が金銭問題でもめることも少なくなり、万が一親が亡くなった場合でも親の資産を把握できているので、遺産争いが起こる可能性も減るのではないでしょうか。

遠距離介護を続けていると心身ともにくたくたになってきます。
そのうえ、介護をしながら仕事もしたい出世もしたいという自分の欲や、妻(夫)や子どもにもいい夫(妻)、いい父親母親でいたいなどと考えていると、確実に倒れてしまいます。
完璧にやらなければという考えはやめて、なるようにしかならない、ケ・セラ・セラ、ぐらいのゆとりを持たなければ遠距離介護は続きません。






使えるサービスはフル活用すること

介護は、育児と違って関係性がだんだんと閉じていく作業です。
介護される方が亡くなることで、終わりを告げるのです。

遠距離介護の必要が生じたときには、まず経験者の声に耳を傾けてください。
くれぐれもひとりで背負い込まないこと。
誰かに相談できたり、理解者がそばにいてくれるだけで、心にゆとりができ対応の幅が広がってくるものです。

ひとりで抱え込み、抜け道のない袋小路に迷い込んでしまうことによって、介護される側の人生も狭くしていってしまいます。
介護される側も介護する側も自助・公助・共助の3つを組み合わせて考えることが大切なのです。
介護サービスを利用しながら、周囲の人たちとどんどん関わっていくことで助けてもらいましょう。
周囲の人が困っているときは、自分が助ける側に回ることだってあるのですから。

介護をする地域の介護サービスが充実し、家族だけで介護の問題を抱え込むことの必要性がないのであれば何も言うことはないのですが、実際には自分で情報を収集し、必要なものとそうでないものを取捨選択して、切り開いていかなければなりません。 地域の方々とのネットワークづくりが、遠距離介護にとって最も重要な作業だと言っても過言ではないでしょう。 介護は人と人の関係性のなかで存在するものなので、遠距離介護という立場で離れた場所から、被介護者の全体像を把握することは非常に難しいです。
遠距離介護を成功させるには、決めた時点で、現地を動き回り遠距離介護に必要なネットワークづくりに励むことです。

さらに遠距離介護の場合は、「遠くの身内より近くのご近所」こそが手助けになってくれます。
文字通り緊急のときには、いつ何時ご近所の方に助けてもらう必要が出てくるかもわかりません。
プライバシーに踏み込む問題云々はこの際割り切り、週末に介護に来た際には菓子折り片手にご近所へのあいさつ回りをして遠距離で介護をしていることを伝え、緊急連絡先として自分の携帯電話の番号を知らせておくぐらいのことはしておいた方が賢明です。

遠距離介護といっても、毎月、1週間から10日間くらいは現地に足を運び、そばにいて介護することが必要になってきます。
介護事業者の対応も毎月きちんと通ってくる肉親の存在が見えるだけで、確実に変わってきます。
できるだけ介護サービス事業者との関係を密にして、ケアマネジャーの全面的な支援が受けられる環境づくりにつとめることが大切です。

残された家族は、家事などを分担して受け持つことになるので、遠距離介護とはいえ家族全員の協力なくして成功はありえないし、しかしその期間がどれくらい続くのかは誰にも予想できません。
介護が原因で、結果的に家族崩壊に至るケースも少なくないのです。
どう介護するのがモアベターなのかを、介護を始める前に、家族で十分に話し合いましょう。






まとめ

今回の記事はお役に立ちましたでしょうか。

呼び寄せるべきか、遠距離介護か、家族の中で誰が介護の中心になるのか、家事は誰が受け持つのか、きょうだいでの役割分担は可能なのか、かかる費用はどうするのか。
漠然とみんなで協力しながら介護しましょう、というようなスタンスではなく、シビアに責任の所在を明確にし、お互いが納得して介護を始めることが大切です。
介護によって家族の誰かにしわ寄せが行き、犠牲になるよう可能性がある場合は、潔く施設への入居を選択することも考えてください。

遠距離介護で自滅しない選択

筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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似顔絵は、「似顔絵メーカー」で作成しました。