認知症を発症すると、次第に的確な細かい判断ができなくなります。
一つひとつは小さい失敗なのですが、気づかないうちに頻繁に重なるようになっていきます。
独り暮らしの場合は失敗に気付いてくれる人がいないため、認知機能が次第に保てなくなってきた時に深刻な事故につながる場合もあります。
同居人や介護者が気を付けたいのは、失敗を見つけた時の対応の仕方です。
今回は認知症の方にやってはいけないNGな行動をご紹介します。




認知症の初期に起きやすい失敗


認知症を発症し始めた初期の頃は、認知症でない人でも普段やってしまう「うっかり」からの失敗に見えることがあります。
例えば、燃えるゴミの中に缶や瓶を入れてしまったり、食器洗いをしている時に洗剤を流し忘れたまま洗いかごに入れたり、手を洗ったあと水道の蛇口を閉め忘れて水を出し放しにしてしまう、などです。
この時期は本人が認知症を発症していると気づいていないので、ご家族も何かおかしいとは薄々感じながらも認知症を発症していることを認めたくない傾向があります。
そのため、同居人や介護者の態度によっては、認知症の人がさらに混乱してしまうことになるのです。

失敗した時についやってしまうことに、細かく間違いを指摘したり、感情的に小言を言ったりすることがあげられますが、これは逆効果です。
なぜならアルツハイマー型認知症の場合、実際にはできていなくても、本人はちゃんとできているつもり、という場合が少なくないからで、なぜ注意されるのか、小言を言われているのかわからないのです。
つまり、家族がよかれと思って言ったことでも、本人にとっては「私が食器を洗ってあげているのに、なんで文句ばかり言われるのか」と納得できない状態なのです。
これが続くとフラストレーションが溜まり「うるさい!」という反応になって、口論につながります。
認知症の人は言語機能も次第に衰えてくるため、口論になると言葉で言いまかすことができず、怒りのはけ口がないまま言いくるめられてしまい、「もういい」と拗ねてしてしまったり、「ちゃんとやっているはずなのにできていないと言われる自分はおかしいのだろうか」と不安になり、うつ状態に陥ってしまうこともあります。





やってはいけないNG行動


では、具体的にどんな態度がNGなのかを挙げてみましょう。

1.感情的に怒ってしまう

認知症の初期の段階で、同居人や介護者が意識したいこととして、認知症は特別なものではないということを認めることです。
年齢を重ねれば、うっかりゴミを出し間違えることもあるよね、とゆったりと構えることが大切です。
燃えるごみにアルミ缶が入っていたら、本人に言わず気づかれない時に家族がこっそり出しておく、食器に泡がついていたら、そっと水洗いしておく、など家族がフォローすることで口論になることはありません。
口論をしないことは、認知症の本人と同居人や介護者、両者にとってストレスを減らすことにつながるのです。
とはいっても、今までできていたことが次第にできなくなっていくと、同居人や介護者も本人に感情をぶつけてしまうことがあると思います。
そんなときがあってもは、自分を責めないことが大切です。
感情的に怒ってしまった、と落ち込まず、たまにぶつかってしまうのは仕方ないと気持ちを切り替えましょう。

2.脳トレの強要

初期の認知症患者の方に家族がしてしまいがちな行動が、脳トレの強要です。
かく言う私も、恥ずかしながらそのひとりでした。
本人が脳トレ好きで取り組んでいるのであればよいのですが、周りが強制するとストレスにつながってしまいます。
家族としては、認知症が進行することを何とか防ぎたいという思いからなのですが、本人はあまり乗り気でない感じなのです。
また、認知症の進行に伴い、計算ドリルなどは確実にできなくなっていくので、最初は3ケタの計算ができていたのに、それが2ケタになり、2ケタも難しくなることを本人が気付いてしまうことになります。
すると、ああ、こんな簡単なこともできなくなってしまったと落ち込んで、それが、うつ状態を引き起こすきっかけにもなりかねないのです。

別に計算ができなくても老後の生活は十分していけます。
それよりも認知症の人にとっては「計算ができなくなった」と落ち込んでしまうほうが悪影響を及ぼします。
私の場合、母にだけやらせるのではなく、ニンテンドーDSの「脳を鍛える大人のDSトレーニング」を親子で一緒にやって、ゲーム感覚を楽しみながら認知症がどれくらい進行しているかを見ていました。
認知症が進むと集中力や持久力も衰えてくるので、一緒にやっていられる時間も目安になりました。



3.認知症であることを周囲に隠す

テレビや新聞、インターネットなどで認知症の情報が広く紹介されるようになり、最近は認知症に対する意識はだいぶ変わってきたように思います。
しかし、いまだに認知症に対する根強い偏見は存在します。
そのため近所にはもちろん、行政の介護サポート機関や医療関連機関へ相談することもなく隠してしまう家族も少なくないのです。

認知症は周囲が隠そうとすればするほど、苦しむことになります。
狭い生活空間で、家族だけと一緒に過ごし、四六時中同じことを繰り返し聞いたり言ったりを繰り返すようになるわけですから、お互いのストレスが膨れ上がり、口論が絶えなくなります。
周囲に隠せば隠すほどデメリットが大きくなっていきます。
隠さないメリットを知り、サポート機関へ積極的に相談しましょう。

4.家に閉じ込める

認知症を周囲に隠す行為は、家に閉じ込めて出さないことにつながっていきます。
認知症の方は閉じ込めようとすればするほど、外に出たい、逃げたい、という気持ちが強くなり遠くへ行こうとする傾向があります。
アルツハイマー型認知症の場合、長時間じっとしていられないという特徴があり、気づかない間に一人で勝手に外に出てしまうことがあるので、家族が外出する際に迷子にならないように部屋に鍵をかけるのです。
本人はじっとしていられないのに、じっとしていなさいと言われるので、意地でも外に出ていこうとします。
ドアから出られないなら、窓を乗り越えてでも出ていこうとするので、かえって危険になってしまうことがあります。
その場所からできるだけ逃げたいと思い、閉じ込められる恐怖心による意図しない徘徊になってしまいます。

認知症が重症化して生活に支障が出始めると、近所から見ても変化が分かるようになります。
苦情が出はじめてから、ようやく地域包括支援センターや行政が介入するようになることも少なくありません。





まとめ

今回の記事はお役に立ちましたでしょうか。


認知症は、誰にでも降りかかってくる可能性のある問題です。
母の場合は元来外出好きな性格だったので、家に閉じ込めておくという考えは全くありませんでした。
徘徊で迷子になったり、家族が仕事や学校でみな外出して独りでいるときの生活に支障が出てくるぎりぎりまで、本人の意思にまかせて生活していました。
ご近所の皆さんにも、ご迷惑をたくさんかけてしまいましたが、徘徊していると携帯に連絡をくださったり、非常に助けていただきました。

認知症の介護は家族だけで頑張るよりも、周囲に話してサポートを得たほうが精神的にも肉体的にも圧倒的にメリットがあります。
もしかしたら…と思ったら、すぐに周囲に相談することをお勧めします。

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筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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似顔絵は、「似顔絵メーカー」で作成しました。