介護、なかでも在宅介護は、介護者が被介護者に対して物理的な時間的を拘束をされ、精神的な距離の置きづらい「心身一体」の労働です。
被介護者が肉親の場合、義務感から限界まで頑張ろうとしてしまいがちですが、気をつけなければいけないのは、介護者と被介護者が共倒れになり、経済的、精神的に立ち行かなくなることです。
私自身も親の介護を始めてからは、子どもとしての義務感で身動きが取れなくなり、 肉体と精神が休まらない日々が続きました。
フルタイムで仕事をしながら介護をするのは想像以上に辛く厳しい状況になります。
感情のやり場がなくなり、集中力が欠如し、仕事と介護と家庭、すべてに悪影響がでました。
在宅介護経験者の私が感じた限界、そこから転換したことなどをお話します。




決定を後回しにしない


年齢とともに足腰が弱くなっていくのは人間の宿命だと言えます。
ヒトが直立二足歩行になって以来、避けて通れない難点なのが、重力が地球の中心に向かって働いている限り、ヒトは生きていれば必ず、他の動物にない痔や腰痛、胃下垂、ヘルニアなどに罹る可能性が大きくなるということ。
また、長く生きれば膝への負担や障害もそれだけ増えることになります。
身体の自由が徐々に効かなくなるのでそのためのサポートは必要になりますが、お互いの意思疎通には何の障害もありません。
歩行介助、食事介助、トイレ介助など肉体的な負担は大きいですが、どのように介助してほしいかが明確にわかるので精神的なイライラはあまりありません。
同じ介護でも身体の衰えや痛みだけではない、介護者にとって肉体的かつ精神的に大きな負担がかかるのが、認知症による介護です。






認知症と物忘れの違い


認知症は老化からくる物忘れとは全く違います。
物忘れが単なる老化現象なのに対して、認知症は脳の神経細胞が壊れて縮小し、やがて脳全体が委縮してゆく病気です。
発病の原因は、脳にあるアミロイドβと呼ばれる特殊なタンパク質が蓄積され、脳細胞が壊れて死んでしまうことで起こると言われています。
このアミロイドβが加齢により増えやすくなるため、高齢者が発症する確率が高いのです。
稀に若年性アルツハイマー型認知症と呼ばれる遺伝が関係しているらしい30〜50代の若い人が発症するものがあります。
認知症の始まりは、物忘れとあまり区別がつきません。本人もうっかりしていたと振る舞うので、初期に認知症を見つけることは難しいと思います。
私の親の場合も、はじめは物忘れが増えたなぁ、という感覚でした。
もう年だから忘れっぽくなるのは仕方ないよね、と。
その時の感覚としては、何か普通の物忘れと違うんじゃないのか、と漠然とした疑いはあっても、その事実を認めるのを心が拒否しているというのでしょうか。
自分の親だけはボケない、と信じたい気持ちが勝っていました。

しかし認知症は専門医にかからないと、徐々に確実に進行していきます。
いつか必ず認めなければならない日はやってくるのです。

参考までに単なる老化による「物忘れ」と「認知障害」との違いを表にしてみました。

比較するとよくわかりますが、加齢による物忘れは物事の一部を忘れる状態です。


例えば昨日の夕食のメニューを忘れて、「一緒にテレビ見ながら食べたじゃない」という家族からのヒントを得ると、「ああ、そうだ。一緒にカレーを食べたんだ」と記憶を思い出します。
認知症の場合は物事そのものを忘れてしまうため、夕食をとったこと覚えていません。
だから「夕食を食べてない!」と、なるのです。
いくら家族が一緒に食べたと言っても、本人にとっては食べてないということが真実なので、食事を出してくれなかった、私はのけ者にされている、私を飢え死にさせる気なのか、、、といった同居する家族への不信感が膨らんでいくのです。

初期の認知症に対するかかわり方

何かの行動や態度を忘れた時に気を付けたいのは、したことを認めさせようとしないことです。
上記の例であれば、いくら食べたと言い聞かせても、本人は食べた事実を忘れているので、相手が嘘をついてごまかそうとしているとしか受け取ってもらえません。

例えば、夜中に起きてきて「夕食を食べてない」と言われたとしましょう。
確かに6時間ほど前に一緒に夕食をとったので、おもわず「さっき食べたでしょ、もう寝て!」と言いたくなりますが、そこで説得しようとすればするほど信頼関係を壊すエネルギーが無駄に使われて時間ばかり過ぎてゆきます。
応え方としては、

「お腹空いたのかな、今、用意するね」とできるだけやさしく言い、リビングの照明を付けて、おにぎりやお茶漬け、ご飯とお味噌汁など簡単なものでよいので食卓に並べます。
すでにちゃんと夕食は食べており、実際それほどお腹が減っているはずはないのです。 食べた記憶がないので食べないといけない!と思い込んでいるだけで。
私の経験では、実際に食事を並べると夜中にわざわざ用意してくれたことへのうれしさやありがたさを感じて大切にしてもらえていると心が満足するのか、完食することはほとんどありませんでした。
もっと病状が進むと時間の感覚がなくなってくるので、今が夜中なのか日中なのかということも理解できなくなりますが、初期であれば何となく今は夕食の時間じゃないというのがわかるようでした。
もし夜中に一から用意をするのが面倒なら、夜中用の軽食を夕食時に作って置くのがお勧めです。
起きてこなければ、翌日の朝食にしてしまえばよいのですから。
事実の説得はせず、相手の話に合わせてしまうのが一番スムーズで余計なイライラもない対処法なのです。



まとめ

年をとると物忘れが起こるのは仕方のないことです。
その物忘れが加齢からくるのか、認知症という病気からくるのかを見極めることが大切です。
あれ?と感じても、身内の場合はなかなか信じることができずに放置してしまい気づいた時には認知症が進んで手遅れになる可能性もあります。
まずはかかりつけ医に相談されるか、住まいの市区町村の役所や地域包括支援センターに「認知症を診療できる医療機関を探している」と伝えて診療を受ける医療機関を紹介してもらって早めに受診しましょう。

筆者プロフィール

こらっと

大阪生まれ。団体職員兼ライターです。
平日は年季の入った社会人としてまじめに勤務してます。
早いもので人生を四季に例えたら秋にかかる頃になり、経験値は高めと自負しています。
このブログがいきいき生きる処方へのきっかけになれば幸いです。

お問合せはこちらで受け付けています。
info.koratwish@gmail.com


海外からの人材受け入れ団体職員として働いてます。
遡ると学生時代のアルバイトでアパレルショップの売り子から始まり、社会人となってから広告プロダクションでコピーライターとして働きました。
結婚・出産を経て、印刷会社のグラフィック作業員として入社。
社内異動により⇒画像・写真加工部⇒営業部(営業事務)⇒社内システム管理者と、いろんな部署を渡り歩きましたが、実母の介護のためフルタイムでは身動きが取れなくなり、パート雇用として人材受け入れ団体に時短勤務転職しました。

2019年実母が亡くなり、パートを続ける理由がなくなったため物足りなさを感じる毎日でしたが、年齢の壁など一顧だにせず(笑)再びフルタイムで働きたい!と就活し続けた結果、別の人材受け入れ団体に転職しました。
責任も増えましたが、やりがいも増えました。

デスクワーク経験が長く、Office関係の小ワザや裏ワザ、社会人としての経験を共有できれば幸いです。

家族構成は夫がひとり、子どもがひとり
キジ猫のオス、サバ猫のメスの5人家族です。

趣味は、読書、語学学習、ホームページ制作などなど
好奇心が芽生えたら、とにかく行動、なんでもやってみます。

猫のフォルムがとにかく大好きで、
神が創造した生物の中で一番の傑作だと思ってます。
ちなみに「こらっと(korat)」は
タイ王国のコラット地方を起源とする
幸福と繁栄をもたらす猫の総称です。




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